その他|2026.05.12

「最初のレビュワーになりませんか?」— 空状態を機会に変える添え言葉

レビュー0件、在庫なし、空のカート。ECサイトの「空」は離脱ポイントになりがちですが、添え言葉ひとつで参加の招待や次の行動のきっかけに変わります。5つの実例を紹介します。

「何もない」をどう伝えるか

ECサイトを使っていると、「空」の状態に出くわす場面は意外と多くあります。レビューがまだ1件もない商品、欲しかったサイズが在庫切れ、カートを開いたら何も入っていない。こうした空状態は、単に「ありません」と伝えるだけではユーザーの行き止まりになってしまいます。

しかし見方を変えれば、空状態はユーザーに新しい行動を提案できるチャンスでもあります。「最初のレビュワーになりませんか?」と招待する、在庫切れでも代替品を提示する、空のカートで送料無料の条件を伝える。こうした添え言葉ひとつで、離脱ポイントが次のアクションへの入口に変わります。

事例

セブンネットショッピング — 「最初のレビュワーになりませんか?」という招待

セブンネットショッピングの商品詳細ページ。レビュー0件の状態で「最初のレビュワーになりませんか?」と表示
セブンネットショッピング — レビュー空状態を参加への招待に転換

セブンネットショッピングでは、レビューが0件の商品に「最初のレビュワーになりませんか?」と表示しています。「レビューはまだありません」という事実の通知で終わらせず、疑問文で呼びかけることで命令ではなく招待として機能しています。「最初の」という言葉が特別感を演出し、先駆者になりたいというユーザー心理にもうまく訴えかけています。

ナルミヤオンライン — ポイントという具体的な動機を添える

ナルミヤオンラインのレビュータブ。「レビューはありません。」の下に「商品レビュー投稿で10ポイントプレゼント!」と表示
ナルミヤオンライン — 空のレビュー欄にインセンティブを提示

ナルミヤオンラインでは「レビューはありません。」の下に「※マイページの購入履歴より 商品レビュー投稿で10ポイントプレゼント!」と続けています。空状態のスペースを使ってレビュー投稿のインセンティブを明示しつつ、「マイページの購入履歴より」と投稿導線まで案内しています。「どこから書けるの?」というユーザーの疑問に先回りして答える、小さなスペースを最大限に活かした工夫です。

SHIPS — 在庫なしに「2つの出口」を用意する

SHIPS公式サイトのカラー選択モーダル。在庫なしカラーに「再販売リクエスト」ボタンと「在庫のある似たアイテム」を表示
SHIPS — 在庫切れ時に再入荷リクエストと代替提案を同時に提示

SHIPSではカラー/サイズ選択で在庫なしのとき、「再販売リクエスト」ボタンと「在庫のある似たアイテム」のサムネイル3点を並べて表示しています。「その商品を待ちたい人」と「今すぐ別の選択肢で買いたい人」、異なるニーズに同時に応える設計です。多くのサイトが「在庫なし」で終わるところ、SHIPSは2つの出口を提示してユーザーを諦めさせません。

💡 さらに改善するとしたら

「マイページの購入履歴より」という説明をテキストリンクに変えて、購入履歴ページへ直接遷移できるようにすると、投稿への導線がさらに短くなる。 「Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー [第2版]」第3章 コンバージョンボタンのマイクロコピー — 3-4

Amazon — 「あとで買う」で商品との接点を維持する

Amazon.co.jpのカート画面。「削除」ボタンの横に「あとで買う」ボタンが配置
Amazon — カート内の「あとで買う」で購買意図を維持

Amazon.co.jpのカートには「削除」の横に「あとで買う」ボタンが配置されています。「今は買わない」ユーザーの行動を、商品の完全な削除ではなく一時保留に誘導する設計です。「ウィッシュリストに追加」のような抽象的な表現ではなく「あとで買う」という購買意図を継続させる文言が効いています。「削除」と並ぶことで、消してしまうことへの抵抗感からこちらを選びやすくなる対比効果も生まれています。

💡 さらに改善するとしたら

「あとで買う」に移した商品が値下げされた際に通知する旨を小さく添えると(例:「値下げ時にお知らせします」)、保留リストの活用率がさらに高まる。 「Microcopy: The Complete Guide」Chapter 3: Microcopy That Motivates Action

antiqua — 空のカートで送料無料条件を先出し

antiquaの空のカート画面。「あと ¥3,980 で送料無料になります」と表示
antiqua — カートが空でも送料無料ラインを提示

antiquaでは、カートに商品が1つも入っていない状態で「あと ¥3,980 で送料無料になります」と表示しています。空のカートを「何もありません」で終わらせず、ショッピングを再開させる動機を与えています。金額を赤い強調表示で目立たせ、「どうせ買うなら3,980円以上にしよう」という目標を最初から自然に形成させる工夫です。

紹介サイト

  • セブンネットショッピング — セブン&アイグループの総合通販。書籍・CD・ゲームなどエンタメ商品が主軸
  • ナルミヤオンライン — メゾピアノ、プティマインなど子供服ブランドの公式通販
  • SHIPS — 1975年創業の老舗セレクトショップ。メンズ・レディース・キッズ対応
  • Amazon.co.jp — 日本最大級の総合通販・マーケットプレイス
  • antiqua — 大阪発のオリジナルファッションブランド。レディース中心にメンズ・キッズも展開

マイクロコピーの観点

Microcopy: The Complete Guide
Microcopy: The Complete Guide (2nd ed.)
Kinneret Yifrah 著 / NEMALA / 2019年

「Microcopy: The Complete Guide」p.125 では、「言葉は体験するものが何もないように見える時でも、体験を作り出すことができる。空の状態のマイクロコピーはその最良の例だ」と述べられています。レビュー0件も在庫切れも、ユーザーにとっては「何もない」画面ですが、添え言葉次第でまったく別の体験になるということです。

同書 p.130 では空のカートについて「空のカートは不動産の恐ろしい無駄遣いだ」と指摘し、カートが空であることを伝えたうえで説得力のあるセールスダイアログを始め、特別オファーや人気商品への導線を設置することを推奨しています。antiquaの送料無料条件の提示やAmazonの「あとで買う」は、まさにこの空きスペースを活用する実践例といえます。

※ マイクロコピーは株式会社オレコンの登録商標です。

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