このブログについて — 「添え言葉」とは

たった一言が、ユーザーの「やめておこう」を「やってみよう」に変える——通販サイトの「添え言葉」を実例から学ぶブログです。

宮永邦彦
代表取締役 宮永邦彦

どちらのボタンを押したくなりますか?

まず、2つの画面を見比べてください。

Before
添え言葉なしのカートボタン
After
添え言葉ありのカートボタン

左は「カートに入れる」ボタンだけ。右はその直上に 「発送前はキャンセル無料 ・ 到着後30日返品OK」 という一行が添えられています。

ボタンのデザインは同じ。商品も同じ。違うのは、たった一行の「添え言葉」だけです。

でも、この一行があるだけで「買ってみようかな」という気持ちが少し後押しされませんか?

通販サイトのユーザーが抱える、隠れた気持ち

ECサイトでの買い物は、実店舗と違って「実物に触れない」「店員に聞けない」世界です。だからこそ、ユーザーの心の中にはいつも小さな不安や疑問が渦巻いています。

  • 「送料、結局いくらかかるの?」 — 最後に送料が追加されてがっかりした経験
  • 「サイズが合わなかったらどうしよう」 — 試着できないアパレルへの不安
  • 「会員登録、面倒くさそう……」 — 個人情報を入力する心理的ハードル
  • 「このサイト、大丈夫?」 — カード情報を入力する瞬間の緊張
  • 「今買わなきゃダメ?」 — 衝動買いしたくない慎重さ

こうした気持ちに、画面の向こうから一言だけ声をかける。それが「添え言葉」の役割です。

「マイクロコピー」という考え方

こうした短いテキストは、UXライティングの世界ではマイクロコピーと呼ばれています。ボタンのラベル、フォームの補助テキスト、エラーメッセージ、確認画面のひと言——ユーザーインターフェースに散りばめられた小さなコピーのことです。

マイクロコピーの考え方は、イスラエルのUXライター Kinneret Yifrah(キネレット・イフラー)が体系化し、世界中のWebサイト改善に影響を与えてきました。日本では山本琢磨氏が独自の視点で実践手法をまとめています。

※「マイクロコピー」は株式会社オレコンの登録商標です。

このブログでは「添え言葉」と呼びます

「マイクロコピー」が登録商標であることもあり、このブログでは同じ概念を「添え言葉」と呼ぶことにしました。

しかし名前を変えた理由は、商標だけではありません。「添え言葉」という日本語には、日本らしいおもてなしと心遣いの精神が宿っています。旅館の部屋に置かれた手書きのひと言、贈り物に添える短い手紙——相手を思って、さりげなく言葉を添える文化は、日本が誇る美意識のひとつです。

デジタルの世界でも、その心遣いは同じように機能します。ボタンの横の一行、フォームの下の補足テキスト。主役はあくまでユーザーの行動であり、テキストはそれを「添える」存在です。押しつけがましくなく、でも確実にユーザーの背中を押す——日本のおもてなしの感覚を、画面越しに届ける。そんなひと言を「添え言葉」と呼びたいのです。

バイブルとなる2冊の書籍

このブログの記事は、以下の2冊の知見をベースにしています。

Microcopy: The Complete Guide
Microcopy: The Complete Guide (2nd ed.)
Kinneret Yifrah 著 / NEMALA / 2019年
ザ・マイクロコピー
Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー [第2版]
山本琢磨 著 / 秀和システム / 2022年

Microcopy: The Complete Guide は、マイクロコピーの概念を体系的にまとめた世界的なバイブルです。ボタン文言、フォーム、エラーメッセージ、空状態、ソーシャルプルーフなど、あらゆる場面でのマイクロコピーの書き方を89のプラクティスとして整理しています。

ザ・マイクロコピー は、日本のWebマーケティングの実践者である山本琢磨氏による一冊です。日本のECサイトの文脈に合わせた具体例や、コンバージョン率の改善データが豊富に紹介されています。

この2冊は別々の著者による独立した書籍であり、翻訳の関係ではありません。それぞれ異なる視点から添え言葉の力を教えてくれる、この分野の必読書です。

なぜサイトスピードの会社が「添え言葉」を学ぶのか

私たちアイデアマンズは、Webサイトの表示速度を専門にしている会社です。

山本琢磨氏の「ザ・マイクロコピー」を読んだとき、大きな感銘を受けました。ボタンの横のたった一行を変えるだけで、コンバージョンが大きく改善する。小さな工夫の積み重ねが大きな成果につながるという考え方は、表示速度の改善と実は同じであり、強い共感を覚えたのです。

私たちが日々サイトスピードに取り組む理由も、突き詰めればユーザーをサイトから離脱させないこと。表示の遅さで去られるのも、不安を感じて去られるのも、結果は同じです。速度と言葉、手段は違っても目的が重なっている——そこに気づいて、この分野のことをもっと知りたいと感じました。

このブログは、その学びの記録です。

実際の通販サイトで見つけた、優れた添え言葉

このブログでは、書籍の知見をもとに日本の通販サイトを調査し、実際に使われている優れた添え言葉を紹介しています。いくつか例をお見せしましょう。

コメ兵のカートボタン

ブランドリユースのコメ兵では、カートボタンに「3,980円以上で送料無料」という条件を直接組み込んでいます。ボタンを押す直前に「送料はかかるの?」という不安が解消される、シンプルだけど効果的な添え言葉です。

Amazonの返品メッセージ

Amazonのカート画面には、「返品は簡単です」というひと言が添えられています。たった6文字。でも「合わなかったらどうしよう」という購入直前の最大の不安を、この一言が消してくれます。

北の快適工房のフォーム

北の快適工房の注文フォームでは、すべての入力が終わった末尾に「入力お疲れ様でした!」と表示されます。機能でも情報でもない、ただの労いの一言。でもこの一言があるだけで、フォーム入力の疲れがふっと和らぎます。

このブログでは、こうした実例をひたすら集めて紹介しています。サイト名も、スクリーンショットも、なぜその添え言葉が効くのかの解説も。通販の現場で本当に使われている「添え言葉」の実例集です。

それでは、通販の「添え言葉」を実例から学ぶ旅に出かけましょう!

大がかりなデザイン変更も、高額な開発費も必要ありません。ボタンの横にひと言添える。フォームの下に一行書き加える。それだけで、ユーザーの「やめておこう」が「やってみよう」に変わることがあります。

このブログが、あなたのサイトの添え言葉を考えるきっかけになれば幸いです。

参考になりましたか? ぜひシェアしてください!