「お気に入り登録」「相性診断」— 機能の手順でなく価値を伝える添え言葉
「お気に入りに追加」ではなく「後で比較できて便利」。機能名を価値に翻訳することでクリックを後押しする工夫が見られます。3つの事例とマイクロコピーの観点を紹介します。
「何ができるか」より「何が得られるか」
ECサイトには「お気に入りに追加」「マイカー登録」「サイズを確認する」といった機能ボタンやリンクが多数あります。しかし、これらは機能の名前であって、ユーザーにとっての価値ではありません。
ボタンを押すと何が嬉しいのか。その一言が添えてあるだけで、ユーザーの行動は変わります。「お気に入りに追加する」を「後で比較できて便利です!」に翻訳する。「マイカー登録」を「愛車に合った商品の絞りこみができます」に翻訳する。機能名を価値に言い換えるだけの小さな工夫ですが、ユーザーが行動する理由を明確にする効果があります。
事例
エディオン公式通販 — 「比較できて便利」でお気に入り追加の動機を作る

エディオン公式通販では、「お気に入り商品に追加する」ボタンの直下に 「追加すると後で比較できて便利です!」 と吹き出し形式で添えています。
家電は同カテゴリの製品を何台も見比べながら選ぶ買い物です。「お気に入りに追加できます」という機能の説明ではなく、「後で比較できて便利」という追加後に得られるベネフィットを伝えることで、ボタンを押す理由が明確になっています。「便利です!」という感嘆符付きの表現も、ユーザーに寄り添うトーンを生んでいます。
「後で比較できて便利です!」に加えて「値下げ通知も届きます」のようにお気に入り登録で得られるもう一つのベネフィットを追加すると、比較以外の動機も生まれる。 「Microcopy: The Complete Guide」Chapter 3: Microcopy That Motivates Action
フジ・コーポレーション — 「愛車に合った絞りこみ」で登録を動機づける

フジ・コーポレーションはタイヤ・ホイール専門の通販サイト。全ページのヘッダー直下に 「ご登録いただくと、愛車に合った商品の絞りこみができます。マイカー登録」 という黄色いバナーを固定表示しています。
注目したいのは語順です。「マイカー登録」という機能名を前面に出すのではなく、「愛車に合った商品の絞りこみができます」という結果から書き始めている。タイヤ・ホイール購入者にとって最大の不安は「自分の車に合わない商品を買ってしまうこと」。その不安を解消する価値を先に伝え、機能名はあくまで末尾に置いています。
「愛車に合った商品の絞りこみができます」に加えて「登録は車検証の情報を入力するだけ、1分で完了」のように所要時間と手順の簡単さを添えると、「面倒そう」という障壁を先に取り除ける。 「Microcopy: The Complete Guide」Chapter 4: Sign Up, Login and Password Recovery
ワコールウェブストア — 「相性度を診断する」でサイズ不安をケアする

ワコールウェブストアでは、サイズ選択エリアに 「この商品との相性度を診断する」 というリンクを設置しています。「相性度」の部分がピンク色で強調されたデザインです。
「サイズを確認する」「フィッティングガイドへ」といった手続き的な表現ではなく、「相性度を診断する」という価値の言葉を選んでいるのがポイントです。「相性」という表現はインナーウェアという商品カテゴリの文脈にも絶妙にフィットしています。体型・素材・デザインの総合的なフィット感を一言で包括し、「これ、自分に合うかな?」というユーザーの心の声にそのまま答えています。
「相性度を診断する」リンクに加え、「3つの質問で約1分」のように所要時間や質問数を添えると、診断にかかる労力の見通しが立ち、「面倒そう」という行動障壁をさらに下げられる。 「Webコピーライティングの新常識 ザ・マイクロコピー [第2版]」第3章 コンバージョンボタンのマイクロコピー — 3-9
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機能名を価値に翻訳するパターンは、お気に入り登録以外にもさまざまなシーンで見られます。さらに4サイトの事例を 「機能の価値を伝える添え言葉」の事例をもっと見る にまとめました。
紹介サイト
- エディオン公式通販 — 家電・日用品を扱う総合家電量販の公式通販サイト
- フジ・コーポレーション — タイヤ・ホイール・カー用品の専門通販
- ワコールウェブストア — ワコールのインナーウェア・ランジェリー公式通販
マイクロコピーの観点

Microcopy: The Complete Guide の p.61 では、"Change the focus of your texts to what users will gain rather than what they need to do to benefit."(テキストの焦点を、ユーザーが何をすべきかではなく、何を得るかに変えましょう)と述べられています。「お気に入りに追加する」は手順の説明であり、「後で比較できて便利」は得られる価値の説明。同じ機能でも、言葉の焦点を変えるだけでユーザーの行動意欲は大きく変わります。
同書では「あなたのプロダクトやサービスを使った人にとって何が変わるか?以前はできなかった何ができるようになるか?」と自分に問いかけることを推奨しています。エディオンの「比較できて便利」もフジ・コーポレーションの「愛車に合った絞りこみ」も、まさにこの問いへの答えをそのまま添え言葉にした好例です。
※ マイクロコピーは株式会社オレコンの登録商標です。


